気になる情報

台風一過

これはもう終わりかも知れない。

ほんとに考えた。

今までニュースで見ていた光景が目の前に広がるのかもしれない。

私は、大きい災害に直接あった事がない。

意図せずではあるが、うまい具合に避けてきた。

ほんとに運がいい。

だけど、ここで終わりかも知れない…。

2020年夏、日本に最強クラスの台風が来た。

Contents

30秒毎に更新する気象庁サイト

1時間に何度も更新しチェックする気象庁のホームページ。

天気予報のサイトではなく、気象庁のホームページ。

こまめに見ていると、右にずれたり、左にずれたり。

私は台風に対し、とても神経質なので、

今回だけではなく、台風がくると良く見ていた。

気象庁のホームページの、進路図の所だけである。

進路図は、結構頻繁に変わる。

それほど、進路は不確かだということなのだ。

なので、今回も張りつきました。

紫エリアなのか、赤エリアなのか、黄色エリアなのか。

私にはどうにも出来ないのに。

母からの涙ながらの電話

母から電話がかかってきた。

(生きてたんだ)

スマホの画面を見ての素直な感想だ。

こちらからの連絡には返事もなかなかよこさない母。携帯電話を扱いきれないのだろうと思って、気長に返事を待つのが通常になっている。

どんなに電話をかけても折り返しがなかった時期は、何があってもうろたえないようにしよう、と毎日自分に言い聞かせていた。

「大丈夫だんね?」

活字にすると、不思議な感じがする。間違っている気もする。うーん、でもこれが一番しっくりくる。

不安過ぎて、大丈夫だと言えない。

「うん」

返事だけする。

ちょうど、弟くんだけを連れて避難するべきか悩んでいたのだ。

兄くんは避難しないと言う。父親もだ。ついでに猫もだ。

住んでいる市区町村のサイトを見ると、動物も一緒に避難出来る風に書いていた。これは嘘だった訳だが、この時は知らず。

母の訛りを聞きながら、気づく。なぜか母は、うるうるしているのだ。

娘と孫に危険が及んでいると思ったのだろう。確かにニュースで見るとすごそうだ。

「弟くんと避難するとおもうよ」

母を安心させるためにも、念のため避難しようと決めた。

ママの台風経験

私が小学生の時、大きな台風が来た。

私も当然怖がっていたが、母の方が怖がっていたと思う。

私には責任はなかったが、母には子と家と、未来の生活を守る責任があるのだがら、当然だ。

台風のあとどうなっているか・・・母はとても不安だったに違いない。

母から感じた緊張した雰囲気が、今となっては台風経験と共に思い出す記憶になっている。

当時住んでいた家の裏戸は、プレハブなんかにあるような扉だった。

台風が来た時は、まるで強大で透明な何かが外から扉をこじ開けようとしているようでとても怖かった。

ひっぱられる扉を、母はずっとひっぱり返していた。

台風が過ぎ去る数時間の間、ずっと。

その日は停電もした。

電気製品が好きな祖父が、発電機を持ってきたのを覚えている。

周りは真っ暗なのに、灯る電気。すごい!と思った記憶が残っている。

だけど停電はすぐ解消されたような気がする。

いざ避難しようとしても、どうするの?

どこに?いつから?何をもっていく?

特に、いつから開くんだ、避難所とは。

避難所がどこにあるかは知っている。数か所知っている。

だけど、どこも基本は開いていない様な所だし、誰が準備するの?って思う。

何も知らない事に気づいて、住んでいる地域のホームページから問い合わせ先へ電話してみた。

そこでわかったのは、やはり市区町村の方々が準備するみたいだった。

緊急時に発生する仕事だなんて、大変すぎる。

ホームページには、避難所リストがあるらしく、その場所を教えてくれた。

持ち物は、毛布とかと、飲み物、食べ物。

想像できるものだった。

私が行きたいと思った小学校は、開かないらしかった。

避難所と言っても、全部開く訳ではないらしい。

確かに、どんな災害かによって、対応出来ない避難所もあると思う。

たとえば、地震の時に、山裏はまずいだろう。

兄くん達が避難しない宣言をしたので、出来れば近くの避難所がよかった。

何かあった時、近い方がいいはず。

どこに行くかを悩む事になってしまった。

避難所ごとで違う対応

次に行ってみようと思った避難所に、実際に行ってみた。

スタッフの方がいて、対応してくれた。

そこで聞いたのが、ペット不可ということ。

ホームページには写真付きで、ペット預かり所とかかれたスペースがあったんだけど・・・

避難所によるらしい。

「アレルギーの方もいるかもしれないので・・・」

誰もアレルギーの方と一緒にして欲しいなんて思っていない。

スペース確保と維持が大変なのだと正直に言って欲しい。

私の中でクレーマーが目覚めそうになる。

猫を見捨てる事になる?そんなばかな?

車の中だったらいいだろうけど、夜中は施錠するので避難所から出れません、とも言われた。

この時、私は素直に言葉を受け入れながら、

完全な避難っていうのは、出来ないんだって気づきました。

貴重品も持って行くか悩みました。

本当に壊滅レベルの被害であれば持って行くべきでしょうが、

何ごとも無かった場合、逆に盗まれたりの危険がある。

猫を置いて避難して、もし壊滅レベルの被災だった場合、猫を見捨てたことになります。

大丈夫だろうと避難せず何かあった場合、なんで避難しなかったかと周りに思われるのです。

自分の家をシェルターにするしかないのだ、究極は。

買いだめはするべきなのか?

するべきだと思います。

だけど、慌てて準備するのではなくて、前もって被災用として保管して置くべきです。

台風直撃2日前には、スーパーから水がなくなりました。

続いてパン、カップラーメン、保存できる食べ物が無くなって行きました。

私自身、慌てて買って思いました、常備して置くべきだと。

水は水道水をペットボトルに入れて確保しました。

テレビで特集していた、充電もちゃんとしました。

久しぶりにバッテリーも充電しました。

情報収集にはラジオ、と思ったけど、スマホじゃ、スマホのバッテリーが無くなったら聞けない。

スマホ1つでなんでもできるけど、やっぱりアナログは必要だなって思った。

雑魚寝を想像していた避難所

風が本格的に強くなる前に、避難した。

お出かけ用のクーラーの中にお茶とチョコを入れて。

行き先は避難所だというのに、弟くんはお出かけ気分になったようだった。

おにぎりも作った。なんだかほんとに公園にでも行くようだ。

キャンプの時に使うマットと、毛布と、枕を車に積んだ。

結構荷物が多い。

車が無い人は、どうやって避難をすればいいんだろう。

持って行くものもすごく限られる。

避難所について、受付をする。

ペット同伴か書く欄がある。

やっぱり受け入れが出来る所はあるんだな、と認識した。

しかしなんで教えてくれなかったのか?

混むから?ほんとに知らないから??

受付が済むと、こちらへ、と案内された。

クーラーが重い。

通されたのは、1つの部屋。

弟くんと2人だけで使っていいとのことだった。

まさかの個室である。

私が行った避難所は、公民館のような所ではなく、宿泊施設だったからだろう。

そして、思ったより避難者がいなかったんだろう。

コロナという背景もある。

体育館のような広いスペースに、雑魚寝を想像してたので、本当にびっくりした。

兄くんも、これだったら来て全然良かったのに。

ベットもあって、持参した毛布もマットも枕も不要だった。

これから来る台風の事を考えると楽しい気持ちにはならなかったけど、なんだかちょっと気持ちが楽になった気がした。

頑丈過ぎて台風を感じられない

部屋には窓があった。

だけど外は真っ暗で、木々が揺れるのを目を凝らして見つめていた。

駐車場の車は大丈夫だろうか?

一応、周りに倒れる木やポールがない駐車スペースを選んで停めたので、きっと大丈夫。

避難所へ来て、まず弟くんを先におろし、受付で待ってもらった。

車を駐車する場所を厳選したものだから、結果遠くに停めてしまい、建物内へ戻るのは遅くなってしまった。

避難所に戻ると、車を停めに行っただけの母親があまりに遅いので、心配していたような顔の弟くんが立っていた。

心の中でごめん、と思った。

でも、もし車に木が倒れてきたら???

絶対嫌だ。

ベットメイクは自分でしなければいけないので、弟くんへ促す。

「ママやって、ぼく無理」

ああ、弟くんはこんな時でも王様だ。

ため息をついてしまった。

ちょっと悪いと思ったのか、「・・・どうするの?」とやり方を聞いてきた。私は喜んで教えた。

枕カバーだけはつけてくれたが、あとは「もう無理できん!」といってタブレットの世界へ戻って行ってしまった。

汗をかきながら二人分のベットメイクをする。

エアコンを入れてくれると言っていたが、ついたのは部屋へ入ってから1時間後くらいだった。

早めに寝るけど・・・怖い

弟くんも、私も、心配な上に暇なので、早めに寝る事にした。

ベットの上でごろごろするからしょうがないとも言える。

ベットは離れていたので、弟くんが不安そうにしている。

「一緒に寝ようか」

声をかけると、枕を持って素直に来た。

電気を消して、寝ようとする。

外の風の音はあまり聞こえない。エアコンの音くらいだ。

壁は厚いはずなのに、隣の人の何かを食べる音が聞こえてきた。

ちょっと怖い。

弟くんも怖かったようだが、私もじゅうぶん、違う意味でも怖かった。

カギはちゃんとかかっているかな。

何度も確認した。

家にいる兄くんにラインをする。

すぐ返事がくる。

これが最後になるわけないよね、と思いながら送り返す。

避難所リストを見る。

更新されていて、新規受付不可の場所もあった。

公民館などに避難している人は、やっぱり毛布など持ち込んで、雑魚寝しているんだろうか?お年寄りなどは、こういう宿泊施設がいいんじゃないかと、勝手に心配したりした。

そのまま2時間くらい、台風情報をネットで見て、やっと眠りについた。

待望の朝

起きると、外の風は強かったけど、大きな災害にはなっていないようだった。

数日前予想していた威力より、だいぶ下がったらしい。

本当に良かった。

風が強い内は帰らないつもりだったけど、弟くんは帰りたい様だった。

猫もいないし、やはり家ではない場所が、落ち着かないのだろう。家が一番ということだ。

私もここに居たい訳ではないけど、安全の為、居たいのだ。

なんて複雑なんだ。

窓からどんな感じか眺めてみる。強風だけど、大丈夫そうだった。

弟くんが延々と、帰りたい帰りたい、と言い続けるので帰ることにした。

シーツなんかを畳むのも、弟くんは王様なのでやらなかった。

受付のある玄関に行くと、沢山の葉っぱが中に入り込んでいた。

外の落ち葉をかき集めたのかというくらいに。

まさかそんな事はなく、もちろん台風によるものだった。

やはり、相当な風だったらしい。

起きた時にかけた電話で、兄くん達が無事だということは知っていたが、屋根が飛んでたりしないだろうか・・・

別の避難者が、ロビースペースのような所にいて、談笑していた。

10人くらいは居たけど、元々知り合いなんだろうか?

家族親戚で避難していれば、でもそのくらいの人数になるのかもしれない。

帰る際、コンビニも開いてなかった。これは珍しい景色なんだろうなと思いながら家に向かった。

家は、無事だった。

全然大したことなかった、と父親は言ったが、兄くんに聞くと、

「怖かったけど、大丈夫だったよ」との事。

ほんとに無事で良かった。

避難の仕方について考えたり、

常日頃からの備えが大事なんだと、考え直すきっかけにもなった。

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